熱と湿り空気の問題は、空気線図を見なくても**「何が変わり、何が変わらないか」**を言えれば解けます。 この記事では図を使わず、表で整理します。
顕熱と潜熱
| 熱 | 何に使われるか | 例 |
|---|---|---|
| 顕熱 | 温度の変化(温度計に現れる) | 水を10℃から50℃に温める、空気を暖房する |
| 潜熱 | 状態の変化(温度は変わらない) | 0℃の氷が0℃の水になる(融解)、水が蒸発する |
ひっかけの定番は「0℃の氷が0℃の水になるときの熱は顕熱」という記述です。 温度が変わっていないので、これは潜熱です。
空調では、室内の温度を変える負荷が顕熱負荷、湿度(水蒸気の量)を変える負荷が潜熱負荷です。 人体やすき間風、外気の取入れは、顕熱と潜熱の両方を持ち込みます。
顕熱の計算
熱量 = 質量 × 比熱 × 温度差
例:20℃の水200kgを60℃にする。水の比熱を4.2kJ/(kg·K)とすると、 200 × 4.2 × (60 − 20) = 33,600kJ です。 温度差ではなく最終温度の60をそのまま掛けてしまう誤りに注意します。
熱の伝わり方と熱貫流
| 伝わり方 | 内容 |
|---|---|
| 熱伝導 | 物体の内部を高温側から低温側へ伝わる。金属は大きく、静止した空気は小さい |
| 対流(熱伝達) | 流体の動きで運ばれる。壁の表面と空気の間の熱の受け渡しもこれ |
| 放射 | 電磁波で伝わる。真空中でも伝わる |
室内の空気から壁を通って外気へ熱が抜けることを熱貫流といいます。 室内側の熱伝達 → 壁の中の熱伝導 → 屋外側の熱伝達、という3段階の直列です。
| 量 | 求め方 |
|---|---|
| 熱貫流抵抗 | 室内側の熱伝達抵抗 + 各層の(厚さ ÷ 熱伝導率)+ 屋外側の熱伝達抵抗 |
| 熱貫流率 | 熱貫流抵抗の逆数 |
| 通過熱量 | 熱貫流率 × 面積 × 室内外の温度差 |
例:熱貫流率1.5W/(m²·K)、面積20m²の壁で、室内20℃・外気0℃なら、 1.5 × 20 × 20 = 600W です。
大小関係も問われます。
- 断熱材を足す・厚くする → 抵抗が増える → 熱貫流率は小さくなる
- 熱伝導率の大きい材料に替える → 抵抗が減る → 熱貫流率は大きくなる
- 壁表面に当たる風が強い → 表面の熱伝達率は大きくなる
湿り空気の5つの用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 乾球温度 | ふつうの温度計で測る温度 |
| 湿球温度 | 感温部をぬれたガーゼで包んで測る温度。蒸発で冷えるので乾球温度以下。飽和(相対湿度100%)のときだけ乾球温度と等しい |
| 露点温度 | 空気を冷やしていったとき、水蒸気が凝縮し始める温度 |
| 絶対湿度 | 乾き空気1kgに含まれる水蒸気の質量。水分の出入りがなければ変わらない |
| 相対湿度 | その温度で含みうる最大の水蒸気量に対する割合。温度が上がると下がる |
状態変化で何が変わるか
| 操作 | 絶対湿度 | 相対湿度 | 露点温度 |
|---|---|---|---|
| 加熱する | 変わらない | 下がる | 変わらない |
| 露点より高い温度まで冷却 | 変わらない | 上がる | 変わらない |
| 露点以下まで冷却(冷却除湿) | 下がる(凝縮して除かれる) | 飽和に近い | 下がる |
| 水や蒸気で加湿 | 上がる | 上がる | 上がる |
コツは、絶対湿度と露点温度は水蒸気の「量」で決まると理解することです。 量が変わらない加熱・冷却では、この2つは動きません。動くのは「割合」である相対湿度だけです。
結露の防ぎ方
- 表面結露:壁の室内側の表面温度が、室内空気の露点温度以下になると生じる。断熱を強くして表面温度を上げる、水蒸気の発生を抑える、換気するのが有効
- 内部結露:室内の水蒸気が壁の中へ入り、冷たい部分で凝縮する。**防湿層は断熱材の室内側(高温側)**に設けて、水蒸気を入れない
防湿層を「屋外側」とする選択肢は、典型的な誤りです。
覚え方のコツ
- 「顕熱は温度、潜熱は状態」。温度計が動かなければ潜熱
- 通過熱量は「K・A・Δt」(熱貫流率・面積・温度差)の掛け算
- 「量は動かず割合が動く」。加熱・冷却だけなら絶対湿度と露点温度は一定、相対湿度だけが変わる
- 「湿球は乾球以下、100%で一致」
- 防湿層は「暖かい側」
この分野は空調負荷や結露防止の問題にもつながります。表を白紙に書けるようにしておきましょう。